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 スマホに「名前を書いてほしい書類があるんだ」と息子からのメッセージが届いていた。正子の終業時刻に合わせ、2時間前に送ったようだ。連絡すらめったにないため、気付くのが遅れてしまった。  慌てて「明日は休みだからいつでもいいよ」と返信する。間髪入れずに「なるべく早目に行くから」と返事がきて、やきもきしていたであろう息子の顔が浮かび、ふふっと笑みがこぼれた。  就職を機に実家を出た息子は転勤のたびに距離が離れ、顔を見るのは一年ぶりだった。翌日、早起きして帰省してきたのには、こちらの役所で戸籍謄本を取る目的もあったようだ。  正子は自分の想像が当たっていたことにほっとした。書き損じても大丈夫なように2枚手渡されたというそれは、法律上の夫婦になる届け出で、『夫になる人』の欄にはすったもんだのあげく名付けた息子の名前がある。
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