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 ……はあ、苦しい。つらい。  なんなのよ、もう。  しんどいのに、どれだけ頑張らせるのよ。  ぐううっ。  はあはあ。  もうやだ。  ちょっと前までふわふわ幸せだったのに……。  これ、いつまで続くのよ。  ほんと、やだ……。  ゆらゆらと居心地のよかった場所から押し出され、追い出される。  ものすごいストレスの中、ゆっくりと頭から進んだ。  狭く、窮屈なところからなんとか少しずつ動く。圧迫されていてきついし辛い。  一息ついても一定の波にのって外に無理やり押し出される。  何度もそれに付き合うのがしんどい。  もう、こんなの、無理、と体を動かしていると、いきなり明るい世界につるんと飛び出した。  やっと出れた!  そう思って肺に思い切り空気を吸い込んだ。  おぎゃああ、おぎゃああっ!  ん? 「東さん、おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!」  んん?  やっと息を吸って声を上げた私だが……。  おぎゃああ、おぎゃああっ!  あれ? なんでこんな声?  てか、なにこれ……。  まるで、赤ちゃんの……。  私は何か温かいものの上にのせられた。  視界がぼんやり過ぎてなんだか明るいとしかわからない。 「生まれてきてくれてありがとう」  ぽつりと声が聞こえた。  女の声だ。  私はこの喋り方、この声に聞き覚えがあった。  忘れもしない。  それは、私を万年二番にしてきた憎きライバル『土屋 燈子(つちや とうこ)』の声だったのだ。
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