【6】手を伸ばす

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利用価値を失った錦。なら、損得勘定抜きで彼と付き合ってみるのも良いかもしれない。もともと相性は良かったんだ。きっと良い退屈しのぎにはなる。 手を差し伸べたら彼は拒めないだろう。 あの夏の日、迎えた結末に満足がいかなかったんだろう? だから、その続きを知りたくてこうして僕の前に立ったんだろう? 海輝は笑う。 なんてことだ。 あの時、終わったと思っていたのに。 こうして続くことをどこかで望んでいたのだろうか。 錦は見るべきでない真実を知り、彼の人生を捻じ曲げた。 それなのにそこで終わるべき物語の結末の次を彼は望んだ。 何故奪われなくてはならなかったのか。 彼自身に落ち度など何一つなかったのに。 何故踏みつけられなくてはならなかったのか。 どんな罪があったと言うのか。 彼自身分からないまま、信じていた男の手で平穏な日常が壊されたのだ。 だから僕の秘密を暴きたくて仕方が無いんだろう。 ねぇ。お前には僕に対する復讐心があっても可笑しくはないのだから。
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