森田霞の9

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どうしてあの時俺を飲みに誘った? どうしてあの夜店の女を誘った? どうして水野さとみと巡り合わせた? 湧き上がる責任転嫁。 そんな自分が嫌になる。 結局、腐った根は腐ったままなのか。 根本がそのままの自分にハッとする。 そして作り笑顔を貼り付けて首を左右に振った。 「お前は悪くない。謝るなよ」 ちゃんと矯正しなくちゃ。 これからはちゃんと生きなきゃ。 俺のその言葉に溝口の強張った表情筋が少し緩んだのがわかった。 その緩みを見て、パフォーマンスだったのだと言う事もわかってしまった。 「ところで、彼女とは仲直りできたのか?」 グズグズと痛む胸を必死に堪えながら話題を変える。 俺にそう聞かれた溝口は緩ませた表情筋を再び強張らせた。 間違いなく、地雷を踏んだ。 「…振られちゃいましたよ」 散々に遊んでいたくせに、まるで被害者の様な顔をする溝口が滑稽だった。 「なんで?」 「セフレが妊娠して。それが彼女にバレまして。まぁ、俺の子じゃないかもしれないんすけど。パパ活してるような子なんで」 気の毒だと思った。彼女さんを。 溝口は大きな溜息をつき、苦笑いを浮かべる。 そして一言「バチが当たったみたいです」と呟いた。 きっと溝口も気づいてしまったのだろう。 自分のしてきた愚行に。 「森田さん?」 「ん?」 まだ痛む傷を腰に感じながら溝口の呼び掛けに返事をすると、いつも通りのヘラっとした声で言われた。 「因果応報だるいっすねー」 軽快な声色には似合わない、泥池のような目をして溝口は笑った。
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