前章

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あれだけ話しかけられれば、 まあ当然かもしれない。 友達二人が自然に接する光景も、 私が望んだものではあった。 それなのに──何かもやもやする。 私との会話は続かないのに、とか。 自分の友人には私を近づけさせないのに、とか。 真っ先に浮かぶのがそんな感情ばかりで、 思わず頭を抱えたくなる。 何も今日打ち解けなくていいのにとすら思えてきて、自分勝手さにため息が出た。 誘ったのは私なのに、何を思っているんだか。 「よしっ、行くわよ、お稲荷様!  どのみちひと通り拝まないとすっきりしないし」 学業成就に並々ならぬ気合いを見せる子の一言で、 お稲荷様へ向かうことになったらしい。 後ろを歩く私に、 横宮さんがもう一度眼を向けた気がしたけれど、 今度は私が合わせる気になれなかった。 小さな築山は並ぶのも数人で、 ゆっくり進んでもすぐに山頂へ着く。 境内の賑わいが届く一方、 冬木立に囲まれた社は静謐な佇まいだった。 稲荷と染め抜かれた緋色の(のぼり)を両側に、 今度は四人揃って拝礼する。 柏手の直前、何を願おうかふと迷った。 学業は今しがた願ったばかりだし。 お稲荷様はやっぱり狐たちを連想させて、 願掛け自体を慎重にもさせる。 正確には、彼らは稲荷を拠点にする情報組織らしいのだけど、それがまた出方を迷わせた。 神様じゃない上に、 話をただ聞くだけとは限らない。 ……でも、横宮さんのことなら。 二拍手を打ちながら、ちらりと眼を動かす。
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