前章

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だというのに、横宮さんはこの調子だ。 もっと思い切って叫ぶべきだろうか。 でも人目は引きたくないし、それで怒鳴っていると思われたら目もあてられない。 いっそ、あのとっさの一言のままお隣に留まればよかったのか。 うーん、それはそれで、別の後ろめたさにぎくしゃくしそうな気がするけれど。 第一、そんな理由で友達の誘いを断ることを横宮さんは認めないだろうし、 それに美沙ちゃんがこの神社を選んだのは──ああ、やっぱり断るのは無理だ。 結局、こうなるしかなかったのかな。 「……栗子! 聞こえてる?」 「はっ! りーちゃ…っ、終わった? お参り」 危ない、りーちゃんて呼ぶとこだった。 いつの間にか目の前に立つ背高な子に、 慌てて意識を切りかえる。 隣を見れば、横宮さんには美沙ちゃんが待たせたことを詫びていた。 相変わらず楽しそうな声音がそのままお喋りへ移れば、お隣さんの反応より早く私の前から制止が飛ぶ。 「お喋りは後! …あの、わたしたち縁日行きますけど、どうします?  混雑が嫌なら、鳥居のそばで待ち合わせても」 「えーだめだよりーちゃん、 一緒に行ってもらおむにゅう」 「何回もりーちゃん呼ぶのはこの口か?  ていうかね、初詣先を縁日基準で選ぶのは日比谷ちゃんくらいなのよ。 もっと近くに静かで良い所あったのに」 「え? 知ってると思ってたけどな。 ここ学業の神様だよ、 あたしたち今年から受験生じゃん」 「何ですって?  そういうの参拝前に言ってよ、ねぇ栗子!」 「あっ…ごめん知ってた…」 「は? ──ちょっともう一回拝んでくる……」 「まぁまぁりーちゃん、 あたしが三人分の合格祈願しておいたからさ!」 「願いは人に言ったらダメ!」
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