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事件前
思えばあれは何かの知らせだったのかも知れない。
一家の存続を揺るがした『あの事件』の前、私は奇妙な夢を見た。
夢の中ーー。
何処かの土手道だろうか。新緑や菜の花の緑が美しい。
私は3年前に亡くなった祖母と自転車の二人乗りをしていた。祖母が前で私が後ろにしがみ付いている。
自転車はリヤカー付きで、そちらには母や親戚が乗っている。
そこに父は乗っていなかったと思う。
リヤカー付きで重いはずの自転車を、生前病弱だった祖母が軽々と運転してるのは不思議な感じだった。
ふと、祖母は私の手を取って言った。
「ここ、持ってろよ。」
後部の私に自転車のハンドルを握らせる。
急に運転を頼まれて戸惑う私。
あたたかい春風を顔に受けながら、自転車のバランスをどうにか保ちながら一定の速度で走る。
そんな所で目が覚めた。
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