1 蝕

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1 蝕

蝕 01 鱗剥ぎ覗くその身もプルプルと蒼より淡き喰月の空  02 崩れゆく無数の鏡露となり白く濁りて王冠を成す 03 闇喰らい光を放つ飴玉の雫弾けて橋梁と散る  04 シトシトと宙から産まれ円に落ち透けて膨らみ齧り取られる 05 矢印と目玉の赤が同期せず眩暈誘いつ地平が降りて  06 焼餅をゴムと喧伝する口にオレンジの肌香りもきつく 07 擂鉢と硬い豆腐が棲む路に四ツ足の塔ニョッキリと生え  08 暗闇を探り手繰りて道連れに白木打つかる音さえ聞こえ 09 騒がしい真空混ぜて糸を引くプサイ輪舞のカンバスは白  10 初雪の峰を想わす粉纏い枯れた膚に苔さえ生して 11 具材から目が生えてきて生えてきて上下左右と対に絡まり  12 天日にて水を奪われ舞わされて一部をネコに咥え取られる 13 粘ついた日射しを纏う建物が毛虫の貌で苛立ちを吐き  14 引き攣った瞳を残し逝くきみに笑みを浮かべて酒注ぎかけ 15 盲目の老婆まったり光臨し乾いて赤く音轟かす  16 加速度を丸く感じていっせいに天の角度でユラリと揺れて 17 塵に浮くヒトの言葉を飲み込んでムシャクシャ咀嚼 濃厚射出  18 メリケンの薫りも絶えて品定め支那さえ遠く延びて巻かるる 19 こってりと脂ののった肉厚の片耳の音両耳で食み  20 衣よりさらりと抜ける色合いに心俄かに引き裂かれ行く 21 ジリジリと起きては爆ぜて紫を超える肉香で強かに待つ  22 はにほにははにほにはにと路地伝い甘く契りて月にも届け 23 一束の蔦の絡まる配列であなたの時が刻み取られる  24 粘りつく大和も列に落下してつるつるつると飲まれて消ゆる 25 三割れの爪持つ腕にその肌を骨をゆとりを奪われてゆく  26 火の宙をパラリと舞いて加速され移る黄色に緑も香り 27 落ちてきてつと舞い上がり渦を巻きカプチーノばりの二色で歌う  28 蓮華蕎麦烏山椒紫芳香草針槐樹栗珈琲さえも 29 干乾びた枝豆昼に光なくパブ・スナックの軒先繋ぎ  30 知られざる形を取りて六角の一般超えて十六相へ 31 トランス‐2‐シス‐7‐デカジエン‐1‐オール 分解前は芳しいのだ  32 紅緑黄が絡み合い白も透け庚申黒く囃子も混じり 33 春先の一日羽化の見性も虹より先は消えて果敢無く  34 疣の浮く溶岩の肌見せしめに御霊鎮むる獣の如く 35 菓子を食みをとこの言を聞流せ一字違いの邪睡の果てに  36 皮を剥き丸く煮込めばほっくりと舌に歯茎に喜び分かつ 37 鐵音と吐息溢るるガード下仮面素顔の交錯陸離  38 ヒラヒラと蝶や噂の舞う昼に刺激も緩く舌を惑わせ 39 いまは無きカネボウカラーが似合ってた滴る青と唇の夏  40 ひと鉛過ぎて甘味の五十掛け摩擦応酬地球を巡り 41 砂塵では紫陽花を織り時を見てかはづ甲羅をザラリと撫でる  42 一陣の疾風巻いてバチバチと落ちて弾けて跳んで転がれ 43 にょろにょろとうどんみたいなきみがいてやくみにならないぼくにからまる  44 酒蒸しの鶏肉塩に招じ入れポン酢茗荷を活かして独り 45 おやまあま、お指、そんなに美味しいの。だったら出すわね。晩のおかずに……  46 縦長に並んで緑にっこりと丸い頭を揺らしているよ 47 ドクドクと脈打つ紅が幾重にも光を返し黄昏を待つ  48 暁の玻璃を透かして魔法陣五黄中空南北が逆 49 苛立った鰻の肌でヌメヌメと黒き音無き川面打つ月  50 倫敦の古書の通りも懐かしく抜かれ奪われ黄のみが遺れ
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