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1.プロローグ
エジプトの王都テーベ
ファラオは王宮の門を出て、一点を見つめた
北の砂漠からわずかに土煙が上がり始める
それはゆっくりと王宮へと近づいてきた―――
「??」
ファラオは首を傾げた
花嫁が乗っているはずの、豪華な乗り物が見当たらない
軍行のような隊列だけがどんどんと近づいてくる
「ファラオ…これは……」
そばに控えた大臣が口を開きかけたが、後に続く言葉が無い。
「花嫁がいない!?一体どういう事だ!?」
軍の総司令官がファラオの横に並び、剣の柄に手を掛けた。
ファラオは総司令官を片手で制し、後ろへと下がらせる。
「……」
隊列はとうとうファラオの目前にまで迫り、その動きを止めた。
先頭の立派な黒毛の騎馬から、軽装の小柄な人がひらりと降りた。
エジプト側の皆があっけにとられる中、その小柄な人はファラオの前に跪き、こう挨拶をした。
「ヒッタイトから参りました、カーラーと申します」
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