インタビュー

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 ようこそお越しくださいました。 「ここに座ればいいの?」  どうぞおかけください。ではあらためまして、本日はお忙しいところありがとうございます。 「まあ私もこの時期は落ち着いてるからね。で、今日はインタビューだったわよね」  はい。ぜひともお話を伺いたくこの場をもうけさせていただきました。日々益々のご活躍かと存じますが―― 「ああ、そういう挨拶はいいわ。さっさとはじめてちょうだい」  ありがとうございます。では早速インタビューの趣旨を説明させていただきますが、いまが盛りの桜について、どのように思われているかをお聞かせ願えますか。 「帰る」  と、仰いますと? 「いやよ、帰るわよ。あいつのことなんかなんにも話したくないわ」  いえ、それは……せっかくこうしてお時間をいただいたわけですし。 「だいたい、おかしいと思ったのよね。秋でもないのに私を呼び出すなんて。それじゃあ何? 私があいつのことをどう思ってるのかを知りたいわけ?」  はい。今回の取材の内容はあらかじめお伝え差し上げたとおりですが。 「そんなの知らないわよ! マネージャーからは仕事取ってきたとしか伝えられなかったんだから!」  どうにかお話しくださいませんでしょうか? 「いいの? どうなっても知らないわよ? 私、あいつのことはボロクソに言うつもりだけど?」  ぜひ率直なお考えをお話しください。 「記事にならないかもしれないわよ?」  一般の企業名、団体名、個人、または差別的と思われる発言をどう扱うかについては当社の裁量で判断させていただいております。 「まったく、肝が据わってるのね。まあ私を呼び出しといてこんな話をさせようってんだから、当然か。いいわ、なんでも訊きなさいよ」  ありがとうございます。 「はあ……それにしても、こんなんじゃ飲まなきゃやってらんないわ」  ご用意いたします。 「そこの灰皿も使っていいの?」  どうぞご自由にお使いください。 「そう。ちょっと、マリちゃん! 私のバッグ持ってきて! そう、小さいほう!」  ゲスト休憩のため、取材を一時中断。
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