1. 上級仕官で王子様で騎士様な、ど偉い御方

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1. 上級仕官で王子様で騎士様な、ど偉い御方

「王宮軍部の上級仕官が馬の買い付けに?」  アリシアが朝食に用意した麦がゆをテーブルに並べていると、父親が今日、軍部の人がこの牧場に来るのだと言ってきた。  アリシアの父は馬の生産牧場を営んでいて、娘のアリシアもまたここで牧場の仕事を手伝っている。  牧場の朝は早く既にひと仕事を終えて、やっと朝食にありつける。お腹の中が空っぽで「早く飯を入れろ!」と胃袋がうるさいので、父親の話を聞きながら、さっき買ってきたミルクを麦がゆにかけてパクつく。 「で、その上級士官って言うのが、中佐で第6王子のフェルディナンド殿下だ。殿下自身が乗る馬を御所望との事らしい」 「なんでまたそんな高貴な御方が庭先取引なんてしに来るのよ」  生産者から直接馬を買うことを庭先取引と言うのだが、これはあまり一般的では無い。馬が欲しい時は商人から買うか、セリで落とすのが普通だ。  王族がわざわざこんな、王都の外れにある牧場にまで来るなんてねぇ。ご苦労なことで。 「そりゃあ、うちの牧場の評判が王宮にまで届いているからって事だろうよ。そういう訳だからアリシア、殿下の案内を頼むぞ」
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