桜の木

1/5
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

桜の木

待ち合せをするときは、いつだって桜の木の下だった。 公園ではなく、町中にある一本の桜の木。 昔、ここには公園があった。その公園がなくなって、それでもこの木だけはずっと残っている。この出来事は私が生まれる前のことだから、母に聞いた話だけれど。 その桜の木はとても大きい。この町のどの桜の木よりも大きい。 その木を待ち合わせ場所の目印にしているのは、私たちだけじゃない。 連日、そこで待ち合わせをしている人を見かける。 友だちと待ち合わせして、楽しそうにその場から去って行く女子高生。 恋人と待ち合わせして、幸せそうに手を繋いで去って行くカップル。 この木はいろんな人たちが出会うのを見て来ただろう。 そして、別れも見て来たんじゃないだろうか。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!