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桜の木
待ち合せをするときは、いつだって桜の木の下だった。
公園ではなく、町中にある一本の桜の木。
昔、ここには公園があった。その公園がなくなって、それでもこの木だけはずっと残っている。この出来事は私が生まれる前のことだから、母に聞いた話だけれど。
その桜の木はとても大きい。この町のどの桜の木よりも大きい。
その木を待ち合わせ場所の目印にしているのは、私たちだけじゃない。
連日、そこで待ち合わせをしている人を見かける。
友だちと待ち合わせして、楽しそうにその場から去って行く女子高生。
恋人と待ち合わせして、幸せそうに手を繋いで去って行くカップル。
この木はいろんな人たちが出会うのを見て来ただろう。
そして、別れも見て来たんじゃないだろうか。
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