ハイジャック

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ハイジャック

「カチ、カチ、」刻々と刻まれていく腕時計の秒針に目を向けながら大使は焦っていた、ハノイのノイバイ国際空港から日本へと帰国するまでの乗り継ぎで搭乗したこの飛行機へ、浮かない様子で窓側シートの座席へと座ると、ベトナム日本大使の中川は、複数の護衛人囲まれた席に不安を感じて、気持ちを紛らわす為、発車前の空港をじっと眺めた、「発車まであと何時だ?」 「恐らくあと、5分くらいだと思います。」  中川の近くに座る護衛人の坂口は隣に座る部下に時間を問いかけていた、やがて窓から見える作業員のチェックが終わり、飛行機から離れていく様子を見かけると、中川は再び右手に取り付けた腕時計で時間を確認した、すると、「(皆様こんにちは、今日もノイバイ国際空港をご利用頂きまして誠にありがとうございます。)」乗務員のアナウンスが流れてきた、やがて、中川が搭乗する飛行機は上空へと走り出し、長らくいたハノイから抜け出した。 1時間後、上空へと飛んでいる間、機内には静かな時間がゆっくりと流れていた、周りに座る乗客達は皆、飛んでいる間に仮眠をとる者、映画を視聴している者がほとんどの中、中川は、今朝パソコンから送られてきたメッセージに目を向けていた、すると、眉間に皺を寄せた表情を浮かべ、パソコンを閉じると、中川は顔を上げて一度席から立ち上がりトイレへと行こうとしたその時、前の座席から不審に動く二人組の男の姿を目撃した、疑問を浮かべながら、座席から立つのを止めて、じっくりその二人組の動きを監視していると、やがて二人は異様なピエロのマスクを被った、その瞬間、中川に緊張が走り出した、「坂口さん!、あれ、何ですか!?」すぐに仮眠を取っていた坂口を静かな声で起こすと、目を覚ました坂口は驚いた表情を見せた、次の瞬間、怪しいピエロのマスクを被った二人組は、床に置いていたボストンバッグからライフル銃を取り出した、その時、中川は確信した、これから何が起こるのかを、「バーーーーン!」すると一人の男が、ライフル銃を一発機内に放った、突然のどでかい銃声に、同じ機内にいる乗客は驚き、ハイジャックが起きたのかとパニックと化した、「You guys should be quiet!、sureba, tadade wa sumanai zo If there's even one suspicious movement, it won't be enough.(お前ら大人しくしていろ!何か一つでも怪しい動きをすれば、ただでは済まないぞ)」そう乗客達に銃口を向けながら怒号を浴びせると、二人は足早に機内の前後へと別れ始めた、「落ち着いてください、中川大使、我々は何があってもあなたを日本へと帰国させます。」隣に座る坂口は二人組の男を睨み付けながら、ゆっくりと拳銃を抜き始めた。 「これから第2作戦に突入する、用意はいいな?」 。 ハイジャックした一人の男は、前の機内へと移動すると、そこにはもう一人鬼の仮面を被る仲間が既に機内を乗っ取っていた、「予定よりも早かったですね?」 「奴を見つけた、間違いない」そう会話していると、仲間が持っているボストンバッグに詰め込まれていた機会を取り出した、「What is your purpose!(お前らの目的はなんだ!)」作業に取りかかろうとしたその時、人質にされた乗客の中年男性が問いかけてきた、しかし、男は視線を向けるも、作業を止めることはなく、もう一人の仲間は乗客に向けて再びライフル銃を構えた、すると、乗客はざわつきながら大人しく座席へと座り込んだ、一分後、「セット完了」男はそうライフル銃を構える仲間に告げ、立ち上がると、機長のいる部屋へと歩きだした、やがて機長室の前へと到着すると、男は軽く二回ノックをした、次の瞬間、機長室の扉が素早く開き、男は中へと入っていった、「準備は整った、始めよう、」 そう男が伝えた相手は、畠山であった。 畠山は飛行機を操縦する機長に相槌をうつと、足元に置いていたバッグからパソコンを取り出した、「各自持ち場についているな、これから第3作戦に入ります」 耳元に装着された通信装置でそう呟くと、畠山は起動したパソコンからスイッチを押した、「カチャカチャ、カチ!」 すると、その一分後、先程ボストンバッグから取り出し、セットしていた機会が動きだし、異様な匂いのするガスが勢いよく機内へ一気に放出されていった、「プシューー!」やがてガスは機内に居座る乗客の方へと流れていくと、僅か数秒後には、先程まで騒がしかった乗客達は一斉に眠り始めた、その姿を、鬼の仮面を被るテロリストはその光景を直視した、睡眠ガスはやがて、天井に備え付けられる排気口を通過して行き、全ての機内が着々と睡眠ガスに犯され、乗客達は眠り始めた、「プシューー!」天井から聞こえてくる不審な物音に、中川は異変を感じていた、「お前達の目的はいったい何なんだ?」中川は困惑しながら両手を上げ、ライフルを持ったピエロの男に問いかけた、しかし、ピエロの男は視線を向けることなく何も反応しなかった、ふと中川は視線を反らし坂口の手元を覗き込んだ、すると、中川のいる機内にも、換気口から睡眠ガスが流れ込んできた、「畜生!」 流れるガスを目撃した、坂口は意を決して拳銃を振りかざし、座席から立ち上がった瞬間、ピエロの男は素早く、拳銃を握る腕から間接を取って、すぐさま拳銃を奪い取った、「お前…まさか!」その瞬間、坂口は驚いた表情を浮かべながら、睡眠ガスを吸い込んで、床へと倒れこんだ、ふと男は床に倒れる坂口から顔を見上げると、中川の他、機内に乗る乗客は全て眠りについた、「乗客は全て完了しました、」 「了解!、各班脱出準備に取りかかれ、」機長室からそう指令を送ったピエロのマスクを被る男に、畠山は呟きながら、パソコンを閉まっていたバッグの底から、制服を取り出すと、マスクの男に手渡した、「やっぱり、上層部は無茶な事しますよ、ねぇ…青葉。」 制服を手に取った男は身につけていたピエロのマスクを脱ぐと、その素顔はエリート諜報員の青葉であった、「仕方ないだろ、中川に情報を聞き出すには、この機会しかなかったんだから、」    「You two need to change your clothes soon.(お二人さん、そろそろ着替えないとまずいぞ)」飛行機を操縦する機長は談笑する二人に他人事そう言うと、目線の先には間もなく空港の姿が見えてきていた、「急ごう、」。 すぐに制服へと着替え終えた青葉は、畠山と共に、ガスマスクを装着して機長室から抜け出し、客室の方へと駆け込んだ、やがて機内の後部へと向かっていると、鬼の仮面を被った武装する人物が二人を待っていった、すると、その人物はゆっくりと鬼の仮面を外し、面を機内の床へと置いた、ふと畠山は鬼の仮面を被った人物の顔を見て思わず驚いた、その正体は若い女性だったのである、「同じチームの恵だ、」そう青葉は畠山に紹介すると、恵はガスマスクの中から硬い表情で青葉に話しかけてきた、「時間が無いですよ青葉さん。中川はどこにいるんです?」  「中川は機内の3ブロック目にいる、行くぞ、」畠山は挨拶無しの堅物な女に苦笑した表情で先に歩く二人についていった。 そして、ようやく中川が眠りにつく客室へと到着した、そこにはもう一人の仲間、山口とCAの一人が協力して眠りにつく中川を座席から降ろしていた「待たせたな山口、後は着替えて休んでいろ」 「了解、」 青葉、恵は直ちに睡眠ガスの抗体を中川の腕に注射し始めた、「この男、見覚えがあるような?」作業をするなかそう囁いた畠山の目線の先は床に倒れ込む坂口の姿だった、やがて中川の腕から注射器を抜くと、恵はすぐさま中川の肩を担いで立ち上がった、「やはりこの男、ただのボディーガードじゃない」心配な表情を浮かべながら畠山は青葉に言いよった、「脱出すれば問題はない、」。 「The plane will soon land at Narita International Airport.(間もなく当機は成田国際空港へと着陸致します。)」 機内のアナウンスが流れてくると共に、眠っていた乗客達が続々と目を覚まし始めた、そして、床へと眠っていた坂口も目を覚ました、「坂口さん!、中川大使が消えました!」 「畜生!どこに行ったんだ?」 まだ意識が起きたばかりの坂口は慌て出す部下達をじっと見つめていると、遅れて事の重大さに気がついた、「すぐに探しだせ!、大使はテロリストに拘束された!」。 飛行機は無事着陸すると、坂口達は急いでターミナルへと駆け込んだ、その頃、機内の中でCAの制服に着替えていた恵は、坂口達が出ていくのを見つけ、常務室に留まる青葉達に連絡をかけた、「先ほど出ていきました、」 「わかった。」青葉は恵からの連絡にすぐに通話を切ると、山口、畠山に告げた、「脱出するぞ、」そう言うと、次の瞬間、青葉、山口は中川の肩を担いで機内の出口へと歩き始めた、一方の畠山はパソコンを手に持ちながら、二人とは別のルートへ向かっていった、「青葉!空港にはまだ奴らがいるんだ、早いとこ中川起こさないと移動が負担になるぞ」 どうにか早足で人気の少ないターミナルへと一緒に走っていった山口は、思わずそう口にした、「抗体は既に打ってあるもうじき起きる筈だ!」 その時、二人の会話によって深い眠りについていた中川がタイミング良く目を覚まし始めた、「!?」 すると、突然の状況に理解が出来なくなった中川は二人を押し退けて、逃げ出そうとするも、足がふらついて上手く走れず、壁へと倒れ混んでいった、山口は慌てて、逃げ出そうとした中川を捕まえようとするのを、青葉は一度呼び止めた、「待て山口!、彼には今何が起きてるか知る権利はある」  「手短にしろ、時間がないぞ」 そう応えると、山口は中川の側から離れ、青葉が壁に持たれる中川に近寄った、「お前達は何者何だ?私が何をした」 青葉は深刻な表情を浮かべながら中川に応えようとしたその時、突如として空港内からアナウンスが流れ始めた、「第2ターミナル付近にて武装するテロリストが潜んでおります、大至急スタッフの案内のもと、避難をお願い致します!、もう一度繰り返します…」  耳にするそのアナウンスに青葉はふと後ろに立つ山口に目を向けた、山口は青葉の目を見て静かに頷いた、「中川さん、話はまずここから脱出してからにしましょう、さぁこちらへ!」。
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