2 御門の朝

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御門の人間は三人といったがあくまでここを住まいにしている者のことで、御門の人間の出入りは多い。常時五人は滞在している。 そういう来客の対応はもう一人の家人である牡丹(ぼたん)に任せてしまっているのが心苦しい……牡丹は華樹と同い年の少女で、クラスは違うが同級生でもある。 「ご当主、おはようございます」 「おはよう。今朝はよく眠れたようだね?」 「はい。やはり御門別邸は空気が清浄で心地よく」 「それはよかった。今日もがんばろうな」 「はっ」 短い会話ですれ違っている御門の人。 白桜は気やすすぎるといわれることがあるけど、いや十六のガキに偉そうにされても腹立つだろう、と思っているので、威厳ある当主への道のりは長すぎる。 白桜のひとつ年下の主家の当代当主が、めちゃくちゃ威厳のある当主なので反論が難しいところだ。 後ろをついてくる天音に問う。 「華樹はどこに?」 「百合緋様のお部屋です。その……なるべき忍んでくださいませ」 「ああ」 天音が詳細を明かさないということは、それなりの理由があるのだろう。 御門別邸は母屋と五つの離れからなっている。 白桜と、白桜の客人である百合緋が母屋に私室を持ち、華樹、牡丹、そして結蓮の三人が一番近い離れに部屋がある。 六つも建物があって手入れが大変だろうと思われるけど、ここは陰陽師の家だ。式に雑務を任せている。 百合緋の部屋の前で、異質な気配を感じた。 御門の邸内にはなかった霊気。だが、これは…… 「百合姫、入るぞ」 「あ、白桜」 ふすまを開けると、縁側に向かって開け放たれた戸の前に、百合緋と華樹がいた。 二人とも登校のために制服だが…… 「白桜様。申し訳ありません……」 「いい。華樹が見つけたのか?」
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