フラミンゴが、両足を地面につけるとき

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* * *  青年は座ったまま、目を大きく見開いて長老を見上げた。 「フラ様が亡くなられたあと、何が起こったのですか?」  老人は石造を見上げて遠い目をする。 「地震が起こった。地は避け、マグマが溢れ出した。大津波が世界中を襲った」 「フラ様がお怒りになられたんですね」。 「その通り。最後に人間の横暴な側面が知られてしまったんじゃ」 「数少ない生き残りの我々は、その反省の上に生きていく必要があるということですね」  青年は同じくフラ様の石造を見上げ、口元に満足そうな笑みを浮かべた。そして、彼は礼を捧げるような仕草を見せた。 「これは、一部の者しか知らないことなのじゃが……この山の下にある洞窟で信じられない発見があった」  長老は、深い(しわ)を刻んだ顔を青年の方へ向けた。 「発見ですか?」 「調査隊いわく『フラミンゴのDNA』なるものらしい」 「それは何でしょう?」 「動物の設計図みたいなものだと言われておる」 「最後のフラ様は亡くなられたのですよね?」 「フラ様のDNA……ワシはそれを使ってフラ様を復活させようと思っておる」 「そ、そんなことが可能なのですか!?」 「必要な装置も、同じく発掘されておる」  長老の表情は一見すると優雅にも見えたが、目の奥には黒い物があった。 「目的は……まさか、巨大地震を起こすためでしょうか!」  長老は口元に不気味な笑みを浮かべた。 「私たちは新たな時代を迎えるのだ。そのためには力が必要だ。力なき者は、この世界では生き残れない。この集落は弱小じゃ。現にお前の両親は、隣国の奴に殺されておろう」  青年は、眉を寄せて困惑した様子だった。 「我々の集落の人々も死んでしまうのではないですか?」  青年はしばらく考え込んだあと、重い口を開いた。 「地下の洞窟はかつて『シェルター』と呼ばれていたらしい。集落の者が、そこに隠れている間に、フラ様のお力で周辺国を滅ぼしていただくのじゃ」  長老は何か言おうとする青年を制し、丘を下っていった。 (了)
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