初恋

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初恋

「なぁ阿部!お前もそう思うだろう?」  加藤の声が左耳を震わす。また始まったかと思うのも束の間、早速僕へのパスが回ってくる。仕事終わりのこの時間に愚痴が始まるのは恒例だ。 「あいつのミスの尻拭いはいつも俺に回ってくるんだよ、全部だ全部」  否定したい気持ちを押し殺して、ノートパソコンを閉じながら曖昧な返事を返す。この類の話は聞き役に回るのが鉄則と心に蓋をしながら、救いの声を待つ。 「阿部ちゃんお待たせー」  きた!ナイスタイミング!  仕事終わり、同期の泉谷との”せんべろ”が日課になっているからこの声にはいつも救われる。 「お前も大変だな」「今日も聞いてくれよ」と表情で会話しながら、僕たちは会社を背にした。
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