プロローグ 第0話 世界の崩壊

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プロローグ 第0話 世界の崩壊

 人生に転機があるとするのなら、俺の人生の転機は間違いなくあの出来事だろう。  満天の星空を背景に轟々と音を立て、全てを破壊し尽くそうとする隕石。衝突してしまえばこの星は瞬く間に滅んでしまうと一目でわかる隕石(ソレ)。  目の前の全てに希望は無い。やがて訪れる滅亡を待つことしかできない人類に、隕石(ソレ)は無慈悲に衝突の瞬間を迎えた。  ——まるで世界の全てが止まったかのように思えた。  音、色、光、動き。全てが失われた瞬間、襲い来る衝撃から逃避しようと目を閉じた。  待つのは死のみ。衝撃は塵の如く体を吹き飛ばし、打ち付けられ、原形を留めず、絶命する。  しかし、次に感覚を得たのは衝撃ではなく、瞼の裏に差す光だった。 「初めまして、二代目のマスター。了承無くお呼び立てしまったご無礼、大変申し訳ありません」  その声の美しさに思わず息を呑む。目を開くとそこには美しい声を発した女性が頭を下げていた。  気づけばそこは白い一部屋の空間で、隕石が落ちていた背景とは変わっている。 「私は平和を司る神格体、名をエイレネ。どうか、貴方様にお願いがあります」  頭を上げた女性は人間というにはあまりにも不可解な点があった。  真っ白なストレートの髪の先は丸みを帯びていてふわっとした印象を与える。髪には緑色の葉をモチーフにした髪飾りがついていて、髪の色と同じ眉毛と睫毛(まつげ)。日焼けを知らない白肌の透明感に海のような青い瞳は美しさを感じさせる。小ぶりな鼻と丸みのある小さな顔。微笑みかける薄紅色の唇が目立つ。  全体的な人間の形を捉えていても彼女は人間ではない。何故なら彼女の背には白い小さな翼が生えている。 「——私達と共に、世界を平和に導いて頂けないでしょうか」  ——人生に転機があるとするのなら、俺の人生の転機は間違いなく、あの出来事だろう。  それは隕石の衝突によって星が滅んだことではなく、平和を愛するエイレネと出会ったことだ。
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