02.重なる不運は訝しく

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『岬。もう聴こえているんでしょう?』 憑いている霊の声が、再び響く。 「うん。聴こえてるよ」 答えると、厘は鋭利な視線を向ける。的が自分自身ではなく、自分に憑依した霊魂だということに気がつくまで、そう時間は掛からなかった。 『やっと話せた。岬……私はあなたにずっと、会いたかったの』 内側の、掠れた“女性の声”は弾んでいた。 『私の名はみさ()、みさ緒よ。貴方の噂を聞いて、はるばるやってきたの』 中の声に、岬は遠い夢のように思い出す。 物心ついたころから共存してきた、憑依体質——— 謎は多く、原因は未だに不明。母親に『憑依』という言葉を学んで以来、掴んできた特徴も幾つかある。 霊の声ははっきりと聴こえて、意志疎通ができること。憑いている霊の姿形は視認出来ないこと。周りの人間には霊の声は全く聴こえないということ。月の周期を終えるタイミング、すなわち満月の夜には、霊が体から離れていくということ。 その後、今までに二度同じ霊が入ることは無かった。“中の声”といくら意気投合をしても、付き合いはおよそ一か月。みさ緒も、その例外ではない。
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