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「君が俺と同じ気持ちでいてくれたことを、幸せに思うよ」
花束を持った片腕に、背中がそっと抱き寄せられる。
「……離れてしまうから、少し気が急いているかもだが、言っておく。俺が、本社の方で仕事が落ち着いたら、いつか君にも来てもらえたらと」
「はい、いつか……」近く訪れるかもしれない幸せな未来に思いを馳せ、「……きっと」と、一言を付け足した──。
……裏路地にひっそりと咲きほころんだ桜が、吹く風に花びらを散らして、目の前をかすめ飛んで行く。
春は、街にも、そうして私の心の中にも、暖かなそよ風とともに吹き込んだようだった……。
終
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