春咲きの恋は、桜色に染まり

11/11
200人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「君が俺と同じ気持ちでいてくれたことを、幸せに思うよ」 花束を持った片腕に、背中がそっと抱き寄せられる。 「……離れてしまうから、少し気が()いているかもだが、言っておく。俺が、本社の方で仕事が落ち着いたら、いつか君にも来てもらえたらと」 「はい、いつか……」近く訪れるかもしれない幸せな未来に思いを()せ、「……きっと」と、一言を付け足した──。 ……裏路地にひっそりと咲きほころんだ桜が、吹く風に花びらを散らして、目の前をかすめ飛んで行く。 春は、街にも、そうして私の心の中にも、暖かなそよ風とともに吹き込んだようだった……。 終
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!