エピソード10.

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エピソード10.

大胆すぎて、引かれちゃったかな…。 整った龍の顔が、驚いて固まってた。 「だって、普通にキスしてくれないんだもん」 変なお願いごとをして意外だったのは、龍が私をとんでもなく甘やかしてくること。 はじめに激甘だとは言ってたけど、それは本当にとろけちゃいそうなほどで。 帰るとすぐに抱きしめてくるし、寝るまでの時間も、ずっと龍の広い腕のなかで…その安心感はとても心地よかった。 そのうえレクチャーしているだけとは思えないほど甘い顔で笑う…。 今までにもそんな笑顔を見たことはあったけど、今はずっとそんな感じだし、何より愛しいものを愛でるようなとろけるまなざしを向けてくるから…。 私のこと、好きなの…? って…勘違いしちゃう。 好き…にもいろんな種類があるから、私のことを好きだとしても、それはどんな種類のものなのかな。 私の方は…とても恥ずかしくて言えないけど…。 龍のこと…大好きだ。 ずっとこのまま、龍の腕のなかにいたい。 そう思ってる自分を感じた。 それは幼馴染みという関係をはみ出した気持ちで、自分の知らない龍がいるのが嫌だって思ってる。 だから、龍に抱いて欲しいと思った。 …今さらだけど、なかなか大胆な発想と提案をしたもんだ。 私の知らない龍を千佳が知ってるなんて嫌で、だったら私も…とか、いつまでも子供みたい。 龍もそう思うからなのかな…。 バージンを奪ってほしいと言ってあるのに、抱きしめて頬にキスするだけで、その先にはなかなか進まないから。 やっぱりバージンって、重たいのかな…。 龍にとって私はいつまでも、子供なのかな…。 …そんなことを考えながら電車に乗り、会社に到着した。 「おう、里沙も来てくれたのか!」 ドアを開けると満面笑顔の工藤がいた。 「工藤こそ…。営業部には関係ないのに」 「そう言うなって…俺の顧客の件だからな。ちょっと気になってさ」 …顧客の心配をして…?工藤も、なかなかいいとこあるじゃん。 先輩と言葉をかわす工藤を少し見直して、私もトラブル対処の手伝いをする。 …時間は、あっという間に夕方になった。 「とりあえず、週明けには問題なく使えそうですね。…よかった」 3人でホッとしたところで、工藤が少し飲んで帰ろうと言い出した。
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