聖女は悪女に断罪される

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 アメリアは私と同じお告げのあった新月の夜に、私よりも六分だけ遅れて生まれてきた。  私達は生まれながらにして、けして共には歩めない運命を背負っている。  一方は国に平和と繁栄をもたらす聖女、ネシェリの巫女。  そしてもう一方は、国を破滅へと追い込みネシェリに封印された悪女、ガブリエラの巫女。  生まれた子が十八の誕生日を迎えるまでに、ガブリエラの巫女である"悪女"を葬らなければ、この国は滅びる。  それがこの国、ルディス帝国の神殿に下った神託だから。  それでも。  アメリアは運命を知りながらも、愛らしい声で私を「お姉様」と呼び、いつだって私の味方でいてくれた。  たとえ私がこの国の全てに嫌われ、"悪女"と囁かれるようになっても。  アメリアだけは、「私はお姉様が大好きです」と愛らしく微笑んで、いつだってこの手をとり導いてくれた。  生まれながらにして産み落とした母の命を奪い、父に疎まれ。  兄にも邪険にされていた私にとって、唯一の光。  だから貴女を、守りたかった。なのに。 「動くな!」  けたたましい足音と金属音を響かせ、洞窟になだれ込んでくる帝国軍の騎士たち。
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