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種族だけの血統が重んじられていた時代から、混血が生まれ、今となっては様々な血が入り混じった人が殆どではないかと思える程である。
身体的特徴などに出て来る種族の特徴は1つで、その中でも竜の種族特性が身体に出ている者が1番だと言われている。
理由は、魔力量が多く、身体能力が高く、頭脳明晰という全てに置いて他の種族に勝るという現実があるからだ。
俺もまた竜の特徴が身体に現れた1人である。俺の名はウェイリス=ナドゥレイ。レイニトーラ王国の公爵家の次男でエメラルドの髪に金の眼を持つ。俺の家は父も兄も竜の特徴を持ち髪と眼の色は俺と同じだ。妹は母の血が濃いのかエルフの特徴を持っている。母と妹は新緑の髪と眼を持つ。
エルフは魔力量も多く、竜までとはいかなくとも身体能力の高さや頭脳面でも優秀である。竜の次に良いとされる種族。ナドゥレイ公爵家は王国で力のある貴族でもある。竜の種族特性がある証は首元に鱗が出るのに対し、エルフの種族特性は耳が尖っていること。狼や兎、猫などは耳や尻尾といった証が出る。
俺は今年、王国の学園に入ったばかりだが、ある人物が気になって仕方ない。公爵家ではあっても次男だから家を継げるわけもなく、恋愛結婚を優先する家の方針もあり、種族も性別も関係なく婚姻相手に求められるのは安定した生活が出来る能力だけだ。家を継ぐ長男だけは、相手に求められる条件が多くなる。
俺が気になっているその人は同性で、成績としては真ん中くらいで突出するものがなく目立つことがない。でも隠されたその顔は見たこともない程に綺麗で、思わず見とれてしまった。人族で平民だけど生活が安定さえ出来るなら結婚相手としても問題ない。俺が頑張れば解決することでもある。問題があるとすれば相手が俺に好意を持ってくれるかってことだけだ。
「ウェイ。また見てるのか。」
呆れたような口調で友であるネリュ(ネリューズ=デノッド侯爵令息)が隣で言った。ネリュは黒髪に赤い眼を持つ黒狼の種族特性を持つデノッド侯爵家の長男。俺の視線は今も気になる人(レスク=ロディン)に向けられている。レスクは藤色の髪に茶色の眼をしている人族。身長は俺と同じくらいだ。
「いい加減、声をかければいいだろ?」
「それが出来たらこんなことしてない。」
俺が視線をレスクに向けたまま答えると、ネリュから大きなため息が聞こえてきた。俺だって話しかけることが出来て、普通に会話が出来ていたらこんな風に見てるだけの日々を送ってない。
「まぁ、あいつはあまり馴れ合わないよな。なんていうか、友人を増やすことを拒絶してるような感じがする。」
「うん。」
ネリュのこの言葉には素直に頷ける。レスクは殆ど周りと会話をしない。必要最小限の会話とやり取りがあるだけで、仲良くなろうという感じが全くしないんだ。だから俺も話しかけることが出来ないでいる。せめて友人となれたなら、そこからどう恋人になれるかと考えることも出来ただろう。
「そういえば、ウェイは大丈夫か?」
「ん?」
「無差別で貴族の子供が攫われているやつ。」
言われて思い出す。貴族の子どもたちが誘拐されるという事件が最近は頻繁に起こっている。性別や種族特性も様々で、年齢まで共通点が見つからないため、無差別だと言われていることも聞いた。
「俺は何もないな。」
「前触れもなく突然攫われるんだぞ?」
「そうらしいな。」
「なんで他人事のようなんだよ。ウェイも狙われる対象に入るんだぞ。」
「そうなのか?まぁ、何とかなるだろ。」
俺は竜の種族特徴を持っているから、同じように竜の種族特徴を持つ相手以外には、対処はいくらでも出来る。
「そんな軽く考えてるとやられるぞ?」
ネリュに言われたこの言葉を、この時もっと真剣に受け止めて対処法を考えていたら、あんなことは起こらなかっただろう。あくまでも竜の種族特徴を持つ人は、他に弱点を相手に握られていない状態で他の種族特徴を持つ相手のみの場合に強さを誇れるのだ。これを俺はすっかり忘れていた。
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