【3PAGE NOVEL】参加作品

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 そう思った途端、俺のモチベーションは一気に落ちた。  ペースダウンした俺に、目の前のモブおじさんが「頑張れ! もっと頑張れ!」と応援してくれる。無理ぃ。だって相手、多分マリパパだもん。俺嫌われたくないもん。  そしてペースは戻ることなく、ピザの大食い選手権は終了した。  食べたピザの枚数は、俺、8枚と半分。10番、9枚と4分の1。   大きなお食事券のパネルを持つ主催者に促され、俺と10番はステージ中央に並んで立つ。  初対面(はつたいめん)でプロレスマスクか。マリパパ、怖いよ……。  どんな表情をしていいのかも分からずに俯いていると、マントがはらりと床に落ち、プロレスマスクが10番の手の中に見えた。  会場が大きくざわめく。俺も顔を上げて、驚いた。 「マリ!?」  隣に立っていたのは、体にクッションを巻き付けたマリだった。 「なんで!? なにその格好!?」 「ごめんね。いつか言わないと、って思ってて、今日が良い機会だなって。私……実は、すごく大食いなの!」  いや、そんなの今はいい。 「マリパパは……?」 「あ、パパあそこ」  ステージ前で、笑顔のかわいいモブおじさんが俺に手を振る。俺を応援してれてたおじさんだ。 「……なんだぁ……良かった……安心した」 「私、大食いでも嫌いにならない?」 「え? 全然。大好き」 「良かった!」  安堵で座り込んだ俺に、マリは赤ラメのプロレスマスクを差し出した。見上げると、彼女の目は、真剣そのもの。 「私と、結婚してください……!」 「……ふつつか者ですが、よろしくお願いします」  予想とは全然違う終わりだったけど。マリパパも「おめでとう! おめでとう!」と泣いている。  それ以外の観衆も笑顔で、会場全体から祝福の拍手が鳴り響く。  ま、いいか。  終わり良ければ、全て良し。 ***  それから俺たちは、仲良くJOJO玄亭の食事を楽しんだ後、結婚した。  マリもたくさん食べる子だと分かり、今は夫婦でフードファイターをやっている。  あの時のプロレスマスクはどうしたって?  男女兼用サイズの他に、来年の春にはベビーサイズも買わなきゃね、って話してる所さ。 完
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