『OCHITSUKE』

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自宅に帰り、シャワーを浴びる。 疲れたからといってのんびり湯船につかっているわけにはいかない。 『落ち着け』と自分に言い聞かせながら早めに部屋に戻った。 「なあ、直樹。今夜こそは泊まっていくだろ?」 「明日の朝も早いことですし、朝からまた迎えに来ることを考えますと……」 「おい、何回言えばいいんだ。もう仕事は終わってんだよ。プライベートでは敬語はナシって約束だろ」 いつまでもマスクなんか着けてるから仕事モードが抜けないんだ。 マスクなんか邪魔なだけだろ。 瞬きする間に素早く俺が外してやった。 まったく。 シゴデキすぎるのか、それともわざとなのか。 まさか今日も帰るなんて言わないよな。 まあ、今日こそは帰すつもりないけど。 「しょうがないな。とりあえず腹減ったから、焼肉でも食うか?」 「…………ピザでいいだろ。今から電話して注文するし」 「健斗の好きなピザは知ってるから俺が注文してやるよ」 直樹が電話をかけ始めた。 焼肉だなんて、あの女に嫉妬でもしたか? 俺にその気がないこと、知ってるくせに。 ふたりで仲良くピザを食べた後、直樹がシャワーを浴びている。 俺は先に浴びていたから、ひとりで直樹を待つこの時間をもて余し気味だ。 さっきから時計ばかり見てしまう。 明日の朝が早いとは言え、夜はまだまだこれからだ。 直樹と二人きりで過ごす夜か……。 夢みたいだな…………。 「おい、起きろ健斗」 あ……直樹…………。 いま、何時だ? 「5時だ。そろそろ起きて支度しないと間に合わなくなる」 「えっ!?嘘だろ……。俺っ」 直樹がシャワーから戻ってくる前に眠ってしまったらしい。 まったく、俺ってやつは。 「ケントさん、おはようございます。今日は終日MV撮影となります。頑張っていきましょう」 早速、仕事モードに切り替えたな。 オンとオフの使い分けは大事だし、悪くない。 昨夜のリベンジは、近いうちに必ず。 もう俺もそんなには待てないから。 そうだ、MV撮影が終わったら直樹に伝えよう。 この部屋で一緒に住まないかって。 ……まるでプロポーズでもするみたいだな。 なんだか急にドキドキしてきた。 落ち着け、俺。 終
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