『OCHITSUKE』

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「…………………………はい、カーット!!」 今日の撮影はこれで終わりだったよな。 モニターでさっきのシーンを確認して、監督からOKが出たので終了となった。 「ケントさんお疲れさまでした」 マネージャーが駆け寄ってくる。 一緒に着替えのための別室に向かおうとしたところに、共演者の女性が声をかけてきた。 「あの、ケントさん。この後お時間ありますか。もし良かったら食事にでもいきませんか?私、美味しい焼肉のお店を知ってるんですよー」 「ああすみません。今夜はこれから予定が入ってまして。また機会があれば是非」 「そうなんですか残念ですー。また今度是非行きましょうね!」 マネージャーが運転する車で帰宅中。 「なあ中田。俺もう27だぜ。高校生の役ってどう?そろそろキツくね?」 「ケントさんならまだ大丈夫ですよ。制服が似合ってる今のうちにやっておきましょう、爆イケ高校生。そのうち先生役のオファーがきますから」 先生役か……。 それもやってみたいかもな。 「ところで自宅に直行でいいんですか?」 「もちろん。今日は疲れたし、早く帰ってゆっくりしたいからな」 共演者の女と食事なんてノーサンキュー。 相手をするのはカメラの前だけで十分だろ。 仕事絡みでお誘いが来ることもあるらしいが、中田が上手いこと回避してくれてるらしい。 どうしても外せない時には必ず中田を同行させることにしている。 中田は俺にとってシゴデキの敏腕マネージャーだからな。 「確かに。早く帰って体を休めてもらわないといけません。明日は朝から新曲のMV撮影ですから」 そう。 新曲『OCHITSUKE』のミュージックビデオ撮影がある。 自分の中の怪物(モンスター)を飼い慣らす……という歌の世界観を表現するためにハードな撮影になりそうだ ただ、早く帰ってゆっくりしたいというのは、それだけの理由ではない。
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