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窮屈より前屈
儚さと汚さのなか私たち病んで笑って泣いて息して
高そうなアクセサリー並ぶインスタを閉じて啜ったカップラーメン
既読無視されたラインをブロックし寝転ぶ午前三時のベッド
焼け焦げてなお母を乞うあの子より選んだ夜は綺麗でしたか?
観覧車をひとりで乗っちゃいけないという法律はございませんよ
野良猫を追いかけまわすパンプスの音がやけにうるさく聞こえたナンデ
甘夏が詰まった箱の送り状を一目で破く黙した母が
終電を逃してもなぜか楽しくて笑っていられた呆れるほどに
化け猫と子が指差した三毛猫にふるふる揺れるふたつの毛玉
読むほどに苦しくなったオフィスではわたしひとりが酸欠状態
売れ残るパプリカばかり目についたトリになりたい週末の夜
せんべろで若者たちが機嫌良く歌うよエエト「酔いどれ知らず」
わたしならもっと幸せにできるからご祝儀なんか渡したくない
痩せ我慢しながら爪先うごめかせ摘んでみたい猛暑の粒を
突き刺さるなもなきものの言葉ほど痛くてなかなか消えてくれない
許されぬクーラー見上げ汗を拭く我が子も視界に入れないあなた
密やかに集うもののけたちによる百鬼夜行はきっとかわいい
ウイスキーをラッパ飲みする動画みてボソリ呟く「もったいないなあ」
かりゆしを着て献花する列につい鬼籍の人を探してしまふ
夢に見るニライカナイに友達がみんないるよとおばあが笑う
ノロワレロなんて呟き泣いている何もしないで何もしないで
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