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怪獣の卵
「皆の者、よく聞けぃ!」
ででん!
大広間に部下を集めた魔王様は、膝の上に息子を乗っけて言った。
三歳の息子は、魔王様にそっくりなワガママ坊主である。魔王様がお触れを出している間も、まったく気にせずスマートフォンを弄っている。その携帯、落として壊されて買い直したばかりの新品なのに大丈夫か?と部下達はちらっと思った。思っただけで口にしないが。
なんせ、息子をデロデロに甘やかしている魔王様である。余計なことを言ったらこっちの首が飛んでしまう。
「我が息子が、怪獣の卵を食べたいと言っている!」
「え」
「よって、今から怪獣を討伐する勇敢な者を募集する!なお、誰も名乗り出ない場合は……わかっておろうな?」
「ええええええええええええっ!?」
部下達は、一斉に目配せ。
玉座の間を立ち去ったあとで、盛大な押し付け合いが始まった。
「わ、儂は持病の腰痛が悪化したので無理じゃ!む、昔なら魔法でガツンと倒してやれたんだがのう!」
と、宰相。
「私だって無理でございます!わ、私が離れたら一体誰が世界征服計画を練るのですか!?」
と、秘書官。
「ぼぼぼぼ僕だって無理だよぉ!そ、そうさ、僕はよく息子様の遊び相手に呼ばれるんだ。息子様のオセワをしなくちゃいけないからね!」
と、幹部。
「俺だって無理だっつーの!怪獣だぁ!?勇者Aのひのき棒でボッコボコにされるレベルの俺等に勝てるわけねーじゃねーかー!」
と、下っ端。
その他にもやれ魔王城のお風呂の掃除が、トイレの掃除も、最近風邪気味で、新しいゲー厶の発売日が近いから死にたくないだの。みんな勝手勝手なことを言って怪獣討伐任務から逃げようとしている。
――というか、ゲーム発売日が近いから嫌だとか言った奴!おぬしが行けば良かろうに!ぷんすこ!!
宰相は怒った。
そして考えた。いかにして自分がミッションから逃れつつ、他のやつに押し付けて成功させるのかを。相変わらず、自分が行く気は皆無なのであった。
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