B面

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B面

 姉さんが逝って三年が経った。そしてあいつらがあの派手なパーティを開いてから一年。僕がここまではっきりとしたリベンジを心に誓ってから一年。もし、彼らがあの結婚パーティを開催したのがあの日でなかったら、僕は彼らのことを許したのだろうか。  破産のうえの事故死。両親がそんな風に他界してから、二人で懸命に生きてきた。姉さんは昼は事務員、夜はスナックでバイトをしながら学生の僕を支えてくれた。塾とコンビニでバイトしながらの学生生活には、周りの学生たちのような気楽さや華やかさはなかったけれど、いい会社に入って姉さんに楽をさせてあげたいという気持ちだけで頑張ることができていた。あの日までは。  「将来を誓った人がいる」って頬を染めた姉さん、「勇が卒業したら結婚しようかな」と笑った姉さん。なのに、その時を待たずに逝ってしまった姉さん。彼女を殺めたのは、姉さんがいながら他の女になびいた男とその女、そしてその男が宿した子どもだった。狭い部屋のなかで一人で大量の出血をして倒れていた姉さんは、二度と僕の名を呼んでくれることはなかった。  姉さんが逝ってからなんのために学んでいるのかもわからなくなった僕は、夢も生きる希望も失くしてしまった。あれほど真面目に通った大学も退学し、茫然と生きながら姉さんを捨てた男と姉さんから男を奪った女のことを知ってから、ただ二人のことを調べた。  そしてわかったのは、姉さんが逝ってから二年後、祥月命日ではないけれど同じ十九日という日に彼らが派手なパーティを開いたこと。  僕の生きる希望も、夢も、姉さんの命も奪ったやつらが姉さんの命日、十九日に結婚をした。そんなやつらが幸せになることなんて許されないはずだ。だから計画をたてた。あらゆることを想像しながら彼らに復讐をするために。  そしてチャンスの芽は、こんなご時世のなかだからやってきた。  それが僕だけの意思ではない気がしたのは、その日が十九日だったから。あいつらの結婚記念日。  それは神が僕に与えてくれたただひとつのラッキー。
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