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――八七一年、東北。
「近頃地震続きだな」
「ああ。何かの予兆なんじゃないかって噂するやつも出てきた」
畑仕事の手を止めてふたりの男が言葉を交わす。
一人は首に掛けたぼろ切れで顔を伝う汗を拭い、もう一人は前方に聳える山に目を向けながら続けた。
「あの山がもうすぐ爆発するんじゃないかってさ」
「……明峡山か? 確かに揺れが特に酷いが、それはさすがにないんじゃないか?」
しかし数週間後――山から噴き出た真っ赤な津波が農村を襲い全てを焼き尽くし、共に溢れ出た瘴気に人々は為す術もなく犠牲となった。
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