153人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
話していると、裏切られたと知った時の苦い気持ちとともに、そうなるまで気づかなかった私自身への自嘲の思いが、ふつふつと湧いてくる。さっきまで話をしていた男性もきっと、今の私と同じ気持ちでいただろう。
「しかもその、相手の子は私の友達で。高校からの付き合いで、私は親友だって思ってましたけど、向こうにとっては違ったみたいですね」
「それは……辛いですね」
「ええ、辛かったです」
ふふ、と洩れる笑いが苦くてしかたない。
「最初は浮気だったのに、途中からは私が浮気相手の扱いでしたし。怒りたかったけど、怒れなかったですね。そんな気力も出なくて。だって、相手の子と二人で来て、しゃあしゃあと言うんですもの。俺と明乃は愛し合ってる、その証拠に愛の結晶もできたから結婚する、だなんて。どの口で私にそんなことが」
「え、ちょっと」
唐突に、男性が私の話をさえぎった。
「今、なんて言いました」
「だから、どの口でそんなことが言えるのかと」
「そうじゃなくて、……その、あなたの彼の、相手の名前」
「え? 明乃、ですけど」
「もしかして永井明乃?」
最初のコメントを投稿しよう!