また、あえたね。

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 ***  それから、毎年、毎年、毎年。  私の上に、人が飛び降り続けたのである。性別も年齢もバラバラ。それなのにみんながみんな、最後に私と目を合わせて同じことを言うわけだ。  『また、会えたね』 『また、会えたね』 『また、会えたね』 『また、会えたね』  あれは、一体誰からのメッセージなのだろう。  去年、ついに私は怪我をした。飛び降りて来たおばあさんの手がもろに顔面を強打したのだ。  怪我といっても、鼻血が出た程度だったけれど。それでも私の恐怖を煽るには十分だったのである。そう、きっと次はもう逃げられない。私は今度こそ、飛び降り自殺に巻き込まれて死ぬことになる。誰かが、私はそうやって死ぬことを望んでいるのだと。  遅いと思われるかもしれないけれど、ここでようやく私は神社に駆け込んだのである。とにかく誰でもいいから助けてほしかった。この、幽霊なのか妖怪なのかもわからない存在から、あるいはその呪いから解放してほしいと。  ところが、神社の神主さんは私を見て一言。冷たい目でこう言い放ったのである。 『あなた、十年前に誰かを殺したでしょう?しかもそれを忘れましたね?その相手は、十年かけてでも貴女を殺したかったとみえる』  その呪いを解くことは無理です。彼ははっきり、私に死刑宣告をしたのだ。 『もう二度とこの神社に来ないでくださいね。私達は、貴方の上に飛び降りたくないですので』  十年前に殺した“誰か”。  まさか、と私は思い出したのだ。十年前。小学校一年生の時通っていた学校で起きた出来事。  その学校は結構な田舎にあって、学校の中で猫を飼っていたのである。茶色の、ちょっと大きめの雑種猫。学校のみんなに可愛がられていたけれど、私には全然懐かなくてそれが不快だった。しかも、当時片思いしていた男の子がその猫をめちゃくちゃ可愛がっていて――ようは、嫉妬したのである。  だからある日、ちょっとした復讐をした。  窓際に座っていた猫を、校庭の方へ突き落としたのである。四階の、家庭科室の窓から。  猫は頑丈だから、高いところから落ちたくらいじゃ死なないと聞いていた。だから、その猫が死ぬなんて思っていなくて。あくまでちょっとビビらせてやろうと思った程度だったのである。  でも、その結果は。 ――あ、あいつの、呪いだっていうの?  思い出した。あの猫がメスだったこと。  また会えたね、と。何度も、何度も、何度も私を見た死体たちの目は全部、あの猫と同じ金色の目をしていたこと。  彼女は私に、十年かけて思い出させ、思い知らせようとしているのだ。私は震えあがった。次、私の上に死体が降ってきたら避けられるのだろうか?あるいは、今度は私自らがどこから飛び降りてしまうのか? ――やだ、死にたくない……死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!  神主さんに見捨てられてしまった以上、私はもうこの掲示板くらいしか頼れるところがない。  お願い、助けてほしい。猫を殺したくらいで、どうして私が死ななくちゃいけないのか。しかも、あの時私はまだ小学一年生の子供だった。猫があんな程度で死ぬなんて思ってなかったんだから、あれはただの事故だ。あいつがちゃんと着地していれば、あんなふうにコンクリートにたたきつけられて死ぬこともなかった。あれは完全に、あの猫の自業自得ではないか、みんなもそう思うだろう?  え?何その反応。  ちょっと待って、どうして、みんなわかってくれないの?自業自得?私が?因果応報?ねえ、待って。待ってってば。だって、あくまで死んだのは猫で、人間を殺したわけなんかじゃないんだから、どうして。  お願い、見捨てないで。誰か書き込んで、頼むから助けて。  私、まだ十七歳なんだから。かわいそうだと思わないの?お願い、助けてよ、ねえ。  まだ死にたくqふん93fくぇw:j
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