魔王専属秘書はやり直したい

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何故、ゲルテはラナを最終兵器と呼んでいたのか。 何故、ゲルテはラナを拾ったのか。 ラナは、極めて稀な潜在能力を持っていた。 ラナは、魔王をとうに超していた。 これほどの魔力、これほどの威力。 魔王が鍛え上げた、本当の化け物。 ラナは静かにゲルテの方へ歩み寄る。 ゲルテは未だ血を流しながらこちらを見た。 「ハハハッ、素晴らしい、素晴らしいぞラナゲイル!お前はその力を使って、いずれは世界を─────」 ゲルテは倒れながらも不気味に笑っていた。 世界を征服しろなどと言ってくるのだろう。 ラナは無表情でゲルテの真横に剣を刺した。 「お前は、やはりこの世にいてはならない」 もうどちらが魔王なのか見分けもつかない状況でラナはゲルテを見下ろした。 「はっ、確かに私は今この場で命が尽きるだろう。だが、ラナゲイル、お前はその力を利用しろ、私のために」 まだそんなことを言うのか、とラナが心の中で呆れ、堂々と言った。 「もう私は、お前の駒ではない。魔王城に戻るつもりも毛頭ない。私は、大切なものが出来た」 ゲルテからの返事はない。 そろそろ限界が近いのだろうか。 同情するつもりはないが、ゲルテの隣にかがんで、微笑を浮かべた。 「お前が、普通の人だったら、育ててくれたことに感謝したかもしれないな」 「……………………そうか」 この男は最後まで情がない。 返ってきたのもそっけない返事だ。 まぁ別に良い返事をもらいたいわけではないが。 ラナはすっと立ち、持っていた剣を少し構える。 「今後、お前みたいな存在が現れないことを心から願っているよ、魔王ゲルテ」 ラナがそんな言葉を残して、ゲルテに止めを刺した。斬られたゲルテは、ラナにずっと溜まっていた魔王城での苦しさと共に消散していった。
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