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「………………こ」
こんなことってある?
帰り道、まだ震える足でギクシャクと歩く私を、支えるように寄り添ってくれる梶さん。
まだ信じられない。
梶さんが「好きです」って。
「まっちゃん、大丈夫?」
目眩がしそうになる私を、心配そうに覗き込む梶さん。
「まだ、信じられなくて……」
「好きって言ったこと?」
「うわあああ」
梶さんはクスッと余裕の笑みを見せる。
「ありえません!どうかしています!私は頭がおかしくなってしまった!」
「落ち着いて、まっちゃん」
まだ理解できない。
状況についていけないし、落ち着けるわけがなかった。
「じゃあさ、深呼吸して、目を閉じて」
「はい……」
立ち止まって、言われたとおり何度も深呼吸をし、目を閉じる。
すると、突然唇に衝撃が。
生温かい感触に目を見開くと、至近距離に梶さんの顔があり勢いよく心臓が高鳴った。
「これで信じた?」
悪戯に笑う梶さんに、もう呂律が回らない。
ふらふらになる私の手をぎゅっと握って、彼は言った。
「小峰にお礼言わなきゃだな」
「はい……」
小峰くんが今も尚、柳さんにお笑いを熱く語っているなんて知らないまま、私達は夜の街を歩き出した。
【おしまい】
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