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 無機質な白い部屋で、たくさんの管に繋がれて君は横たわっている。苦しそうな呼吸を繰り返す君に何もしてやれず唇を噛んだ僕の耳に、蚊の鳴くような小さな声が届いた。 「はい……はい、それで……お願い、しま……最短を希望で……」 何かを懇願するような言葉。今この場にいる僕と君の両親、そして医師は、君の最後の願いを叶えようとその声に耳を傾けた。だけど君の目はなぜか僕らの誰でもなく、何もない虚空に向けられている。 「……いえ……分かり、ませ…………はい……今聞いて、みます……」  君はゆっくりと首を捻り僕を見た。潤んだ瞳で言葉を絞り出そうとする君の口元に僕は慌てて耳を近づける。 「ねぇ、玄斗……私がもし生まれ変わって、また玄斗に会いに行ったら……その時はまた、私と恋人になって……くれる?」 「あぁ……あぁ! 勿論だよ!」 「本当、に? 私の姿が変わってても?」 「そんなの当たり前だろ! 僕は茉莉の見た目じゃなくて、茉莉自身を愛しているんだから……!」 「そう……良かった」  満足そうに微笑んだ君はもう一度虚空に顔を向け、また何やらぶつぶつと呟き始める。 「はい……大丈夫だ、そうです……じゃあ、そのプラ……で、お願……しま…………」  そうして君は永遠の眠りについた。享年22歳。あまりにも早すぎる死がもたらす悲しみの波に僕たちはなす術もなく飲み込まれ、君の最後の言葉の意味など考える余裕もなかった。
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