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昼食
1週間後。
私達は正式に婚約した。サクフォン伯爵は婚約後は城に寝泊まりしつつ、王配としての勉強をしているらしかったが、元王子だった為、実は勉強する必要はないらしく、私と親交を深めに領地から来ていると専らの噂だった。
そんな私は、彼とも会わずに執務室で黙々と仕事をこなしていた。新しく来た宰相補佐の新人はストラウドの仕事の半分もこなせないらしく、結局のところ全て私がやるハメになっていた。
仕事で忙しくしている分にはいい・・・何もかも忘れられるから・・・そう思っていたら、サクフォン伯爵が執務室へやって来た。
「陛下、お昼まだでしょう・・・一緒に食べませんか?穴場スポットを見つけたんです」
「穴場?」
私が剣呑な声を出すと、近くにいた宰相補佐が気を利かせたのか、お昼を食べてくるように勧めてきた。
(いや、私は仕事をしたいのよ?!)
「陛下、たまには普通にお昼を食べてきてください。お身体を壊しますよ」
「テッドが、あと全部やってくれるんならいいけど、夕方までに終わらせないといけない書類が300枚くらい残っているのよ?」
「・・・何とかします」
テッドは、青い顔をしながらも頷いていた。そんなに食事に行って欲しいのだろうか・・・。
「陛下、あまりイジメないであげてください・・・陛下の分のサンドイッチは私が持ってますから、これはテッド様の分ですよ」
「あ、ありがとうございますっ」
サクフォン伯爵が2つ持っていたバスケットの内、1つを宰相補佐のテッドに渡すと、テッドは目に涙を浮かべながら喜んでいた。
「さあ、陛下。これで心置きなく食事に行けますよね?」
「えっ・・・うん」
私は彼の嬉しそうな顔に疑問を持ちながらも、一緒に穴場スポットへ向かったのだった。
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