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流れ星の落ちるところ
柊吾は夜のうちに帰ってくるだろうか。
確認するまで起きていたかったのだが、色々なことがあったからか体はくたびれていて。
ソファでうとうとしたところで記憶は途切れ、電話の音で目が覚めた時、夏樹の体は自室のベッドの上にあった。
不思議に思いつつ珍しく朝早くから鳴る電話に手を伸ばし、表示された名前に慌てて姿勢を正す。
社長の早川からの連絡は珍しいどころではない、初めてのことだった。
その電話の内容にも驚いた夏樹は、いよいよベッドの上で正座をし、会話が終わるとすぐにリビングへと駆けこんだ。
するとそこには晴人と、柊吾の姿もあった。
ダイニングテーブルでコーヒーを飲む晴人が、おはようと手を振ってくれる。
「おはようございます!」
「よく寝られた?」
「うっす。あ、そういえばオレいつの間に自分の部屋行きました? 全然覚えとらんくて」
「あ~、それなら柊吾が運んだんだよ」
「……え? 椎名さんが運んだ?」
「そう、お姫様抱っこってやつ?」
柊吾に抱きかかえられて自分のベッドに寝た?
そんなことこれっぽっちも覚えていなくて、それは酷く勿体ないことのようで、夏樹はがっくりと項垂れる。
「全然覚えとらん……ショック」
「だって~柊吾」
ニヤリと笑った晴人がキッチンに立つ柊吾へと目をやったが、柊吾は顔を上げることなく朝食の準備を続けている。
その様子が気になりつつ、夏樹は礼を述べる。
「えっと、椎名さん! 運んでもらってありがとうございます!」
「あー、うん、どういたしまして」
「……椎名さん?」
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