群青ジレンマ3

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 「嫌だったらい……」  言い切るまえに、凪が俺の胸に飛び込んできた。  ふわりと香る彼女の匂い。頬に触れる髪。  初めて背中に回される腕の感触。近い吐息。  凪。大好きだ。  俺の想い、全てを注ぐように、大事に、大事に抱きしめた。  「ツアー、頑張ってね」  「うん。波瑠も…色々、がんばって」  「俺、でっかくなるよ。心も。体も。体はもう無理かもだけど」  「………」  「そうなれたら、前みたいにゲームしたりさ、飯食いに行ったり、たくさん遊ぼう。また、友達として」  「うん。友達に降格……。ちょっと複雑だけど」  「こら!動揺させんなよ〜」  お互い微笑んでから、再び深く抱き合った。  「じゃあね」  「うん、元気で」  「楽しかったよ」  「オレも。最高に楽しかった」  手を振る俺に、凪はゆっくり踵を返す。  「波瑠っ!」  「う、え?」  急に振り返るから、思わず前のめりになった。  「ありがとー」  そう言って、今度こそ凪は事務所の階段を上っていった。    もうスタジオでもバッタリ会えないのか。  心の中が変に軽くてスースーする。  涙が勝手に流れて出てきて、歩いている間も、鼻を啜りながらずっと手で拭っていた。  人を好きになるって、こんなにしんどいんだ。
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