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「梓さん、孫の誕生報告はいつになったら聞けるのかしら?」
孫を催促する義母からの電話は、日曜の朝の恒例となった。
電話はいつもこの一言から始まり、くどくどと1時間半続く。
孫は男の子がいいとか、産むなら早い方がいいとか、挙句には出産育児こそが女の幸せなのだと古い価値観を押し付けて電話を切っていく。
そんな義母の電話を、夫は何度も断ろうとしてくれたけど、義母は一切聞く耳を持たなかった。
それどころか、嫁を甘やかしてはいけないと夫にまで説教をする始末だ。
1時間半耐えるだけだから、と半分聞き流しながら家のことを済ませるようになって2年になる。
「ほんと毎週ごめんな?」
「大丈夫。2年も聞いてれば慣れるよ」
私たちは結婚して5年目になる。
子供が欲しいと思って、妊活もしたけれどなかなか授からないまま、いつの間にか3年が経った。
夫も私も、何か問題を抱えている訳ではなかった。
でも、何を試しても子供を授かることはなかった。
「俺はさ、子供だけが全てじゃないと思ってる。夫婦2人で過ごすのも悪くないんじゃないかな」
わかってる。
それは私もわかっているし、夫婦2人で過ごすのもいいと思っていた。
だけど、義母はそれで納得してくれないだろう。
「あまり気負い過ぎず、自然に授かるのを待たない?母さんは、俺から説得するから」
不妊治療には多額のお金がかかる。
病院に費やす時間も、決して短くない。
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