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この時坊は、少女の背後にするすると伸びる、綺麗な薄紅の花を見たのである。
その花は、まるで母のようであった。
かあちゃん、と、呼びかけると、花は頷き、ゆっくり消えた。
坊は少女から離れ、花の姿が見えた方を探した。
優しい大きな花は消えた。だが、坊は、自分の進む道の先々に、色とりどりに咲き誇る優しい綺麗な花々を見たのである。
「おいで、一緒に行こう」
少女は言った。
もう、親なし子の集団は歩き出そうとしている。はぐれないように、ついて行かねばならなかった。
坊もまた、口を引き結ぶと、少女の手を握った。
子供らが歩く先を、次々と無数の花が湧き上がり、世界は鮮やかな色に包まれる。いつしか花びらが宙を舞うほどに、花たちは咲き誇った。
母は、もう、この世にいない。
だけど、子供たちは生き続ける。花が護る道を歩きながら。
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