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毎週水曜日と金曜日には、外でお酒を飲んで帰ってくるようだった。
そのお酒の席を共にするのが、例の恋人だったのだ。
問い詰めなければ。
そう思った美和は、金曜日の夜、田代が帰宅するのを彼の自宅周辺で待った。
閑静な住宅街には監視カメラがなく、暗がりに身を潜めていれば誰かに気づかれる心配もなかった。
電話で呼び出したり、メールのやり取りを残せば、田代の身に何かあった時、身内でもある美和は真っ先に疑われてしまう。
そのため、時間は掛かってもこうして足を残さない手段を選んだ。
ガチャ。
閑静な住宅街に並ぶ一軒家の、門が開く音がした。
顔を上げると、田代が自宅の門を開けるところだった。
ゆっくり立ち上がり、彼に近寄る。
彼が自宅の玄関を開錠し、ドアを開けるタイミングで背後に駆け寄り、彼が家に入ったのと同時に足を入れる。
閉まろうとするドアに、美和の足が挟まる。
「なっ――」
声を上げようとする田代の肩を押し、玄関のドアが軽くなった瞬間に、ドアを少し開け生じた隙間から身を滑り込ませる。
足や体が痛んだが、押し入ることには成功した。
「もう新しい恋人がいるんですね。それとも、ずっと不倫してたんですか?」
どう思われようが、どうでもいい。相手は美知を追い詰めた人間だ。
美和はなりふり構っていられず、早口でそう聞く。
田代は笑うだけで、何も答えなかった。
「こんな深夜に一体何の用ですか?」
突然侵入してきた美和の頭からつま先までを、田代の視線が何度も行き来する。
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