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『わたし、ルナ』
『あたしは、リナ』
『にてるけど、ちがうねえ』
『ちがうけど、にてるねえ』
白イルカのルナと黒イルカのリナ。
二頭のイルカは、ルナの弟の病気を治すために、薬をさがす旅に出る。
海のギャングのサメや、ウソつきなカモメにだまされて、二頭ははなればなれになった。
『こまった時は、歌おうね』
『わたしの声はリナにとどく?』
『とどくよ、ルナがだいすきだから』
『じゃあ、わたしにもリナの声がとどくね、だいすきだから』
どんなにはなれていても、おたがいのピンチの時には、呼び合って助け合う。
ルナリナがたすけあって、さがした薬で元気になった弟。
今度は弟もぼうけんに行けるね、と笑顔で終わった物語。
やっぱり、長瀬の書く文章って、作文もそうだったけど、やさしいんだよな。
じっくり読んで、もう一度最初から読み直して、更にもう一度読もうとしたら気づかれた。
「三上くん?」
ちょっと泣きそうになって鼻をすすってしまったことに。
気まずくて、目をそらした。
でも、感想はちゃんとつたえたい。
「……、だって感動したし」
「わたしの物語に?」
「うん、めちゃくちゃ感動したし、おもしろかった! なんで、こういうの思いつくの? ルナとリナ、ちがう種類のイルカで性格も全然ちがうし、でも仲良しで、いつもいっしょ。たすけあいながら大ぼうけんしていくなんて、おれには思いつかないもん。あ、ちょっと待って」
「え?」
ノートを一枚やぶり、おれの想像の中のルナリナを描いてみた。
白イルカのルナ、黒イルカのリナが海の上でジャンプしてハートみたいな形になる。
長瀬に、ハイと手わたしたら、うれしそうに目を細くして。
「これって、ルナリナ⁉」
「そう、おれのイメージだけど、どうかな?」
「とってもかわいい‼ ねえ、三上くん、お願い! 表紙にも、描いてくれないかな?」
「いいよ」
こんな落書きで、よろこんでくれるとは思わなくて、おれもうれしくなる。
『ルナリナぼうけん物語①』の下に、長瀬のリクエストした、絵を描く。ルナリナが海から顔を出している絵だ。
長瀬はそれを見てにっこりと笑っていて。
「弟に見せたら、すごくよろこぶと思う。うちの弟、ルナリナが大好きなんだ」
「長瀬の弟?」
「うん、このお話ね、サイショは弟のために書いたの」
長瀬がはじめて物語を書いたのは、弟のためだったそうだ。
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