after story

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結婚式から2週間後。 7月20日は、志賀の30歳の誕生日。純は仕事を終えると、真っ先に買い物をして家に帰った。食材の仕込みを始めて、志賀の為に豪華なご馳走を準備する。誕生日ケーキも手作りしようと考えていたが、そこまで作っている時間がなくケーキは帰りに買って来た。 料理が1つずつ出来上がって、皿に盛り付けダイニングテーブルに並べていく。メインのローストビーフの塊肉を大きな皿で中央に置き、他の料理もテーブルに並べグラスや小皿を用意した。 するとインターホンが鳴る。 「あっ! 夏哉が帰って来た!」 ダイニングテーブルの端にそっとクラッカーを1つ置いて、純は玄関に志賀を出迎える。鍵を開け、ドアを開き「おかえり!」と笑顔で迎え入れた。 「ただいま!」 玄関に入りドアを閉めて鍵をかけた志賀は、靴を脱ぎ玄関を上がると、純を抱き締めキスをする。唇を離すと、志賀がスンと部屋の中の匂いを嗅ぎ言う。 「いい匂いがする」 「うんっ!」 志賀を先に歩かせ、純はあとをついて行く。志賀がリビングに入りダイニングテーブルの料理を見た瞬間、純はテーブルの端に置いたクラッカーを手に持ち、志賀に声をかけた。 「夏哉!」 「ん?」 純に笑顔を向けた志賀に、純は大きな声で叫ぶ。 「30歳のお誕生日、おめでとう! !」 そう言ってクラッカーを天井に向け、紐を引いてパーンと弾けさせた。 「うわっ! はははっ。純、ありがとう!」 「今日はお誕生日のお祝いだから、豪華だよ!」 「すげぇな。これ全部、純が作ったのか?」 「うんっ! 本当はケーキも作りたかったけど、時間がなくて…お店で買ってきた」 「ふふっ、いいよ。料理だけで十分だって。今日も仕事だったのに、大変だっただろ?」 「ううん。夏哉の誕生日を初めて一緒に祝えるんだもん」 「純…」 志賀は純を抱き寄せてぎゅっと抱き締める。 「ありがとう。今までで最高の誕生日だよ」 「ふふっ、よかった。さぁ、着替えて」 志賀を部屋着に着替えさせ、2人はダイニングテーブルに向かい合わせで座り、豪華な夕食をする。冷えたワインで乾杯をし、贅沢にローストビーフを食べ、2人は笑顔で料理を堪能した。 食事を済ませ片づけた後、リビングのソファーに志賀を座らせ、純は寝室から大きな包みを持って来た。 「えっ! 何、それ?」 驚く志賀に、純は包みを差し出しながら言う。 「はいっ、誕生日プレゼント」 「えっ、プレゼントはいいって言ったのに」 「うん、でもやっぱり何かプレゼントしたくて」 「ありがと。開けていい?」 「うんっ」 純はラグマットの上に腰を下ろし、志賀が包みを開けるのを見守る。 「うわっ、すげぇ! ビジネスバッグじゃん!」 「うんっ!」 志賀がバッグのファスナーを開けて、鞄の性能を見ている。 「どう?」 「うんっ、すげぇいい! これ、高かっただろ……だって、ノートパソコン入れる所のクッション性能、最高じゃん」 「でしょ!」 「純、ありがとう! 大事に使う」 「うんっ。でも、鞄でよかった? 本当は何か欲しいものあったんじゃない?」 「ん? あぁ…」 志賀は優しく微笑みながら鞄をそっと横に置いて、純の手を握り引き寄せる。 「純、本当の事、言ってもいい?」 「ん? 本当の事? 何?」 「鞄ももちろん嬉しいよ。ありがとう。でも、俺が今一番欲しいのは…」 「うん…」 「純と俺の赤ちゃん…」 そう言われて純は一瞬驚くが、すぐに納得し、じわじわと嬉しさがこみ上げた。
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