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遠ざかる革ジャンの背中を見つめて、僕は作戦成功の快感を噛み締める。
僕らが会う約束をしたのは、京都での撮影が半日オフになる明日だった。
でも僕は別の約束を果たしたかった。
だから一言も告げずに今日、陽一の前に立った。
カッターナイフは持ってない。
撮影が終わるまで陽一が泊まってるホテルで待ちぼうけ。
僕も同じホテルに部屋をとってる。
時間もお金も無駄にして、それでもやりたいことがある。
今夜、ホテルのエレベーターにわざと乗り合わせて、背後から三角定規を突きつけたら、僕は君に言うんだ。
「なぁあんた。ちょっと僕に誘拐されてくれない?」
了
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