ラブレター

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初めて君に手紙を書きます。長くなってしまうけれど、最初で最後のラブレターだと思って、全部読んでもらえると嬉しいです。 君と出会ったのは、高校に入学した、3年前の春。 と言っても、違うクラスだったから、お互いの存在を知らないまま、1年間を終えた。 1年生の時の僕は、友達はあまり多くはできなかったし、成績もそこそこだったけれど、まぁ平凡な学校生活を送っていたよ。 2年生になっても、君とは違うクラスだったけれど、隣のクラスだった。2クラス合同で行われる授業が、いくつかあったから、時々君と顔を合わせるようになった。 思い返せば、君のことを意識するようになったのは、2学期ぐらいからだったと思う。 選択の美術の授業が同じだったんだよね。 君は友達と、いつも楽しそうに話しながら、教室に入って来ていた。いつしか僕は、君のその笑顔に惹かれるようになったんだ。 僕と君の席は、話しかけられるほど、近い席ではなかった。斜め前の席で、真剣に作品づくりに集中している君を、僕はつい、チラチラ見てしまっていた。 3年生になって、初めて君と同じクラスになった。好きな人と同じクラスになれたことが、僕はすごく嬉しかったけれど、君はまだ、僕のことを認識していなかっただろう。 ラッキーなことに、化学の実験の班が、君と同じだった!班のメンバー4人は、顔馴染みでない者同士だったから、気まずい空気が流れていたよね。高野くんが、班のみんなに指示を出してくれたおかげで、実験はスムーズに進んだ。 でも、彼は1つやらかしてしまったんだ。 高野くんは、「火が苦手なんだよね」と言って、班で唯一の女子の君に、ガスバーナーの点火を指示してしまった。 その前の休み時間に、君は友達と「ガスバーナーって怖いよね」と話していたのを、僕は聞いていた。 だから、僕が君の代わりに点火したんだ。君に、少しは格好いい所を見せられたかな。 でも化学の実験の班は、高野君が「男子と女子で別れた方がいいよね」とか何とか言い出して、君と別々になってしまった。 その後も僕は、少しでも君に意識してもらえるように、地道に努力を重ねた! 君が日直の時に、代わりに黒板を消したり、君が掃除当番の時に、ゴミ捨てじゃんけんで負けた君の代わりに、掃除当番でもない僕が、代わりにゴミ捨てに行ったり。 文化祭の時には、店番をしている君に、ジュースを買ってきたりした(でも君だけに渡すのは、恥ずかしいから、カモフラージュで、店番の全員分のジュースを買っていった)。 1、2年生の時は、文化祭なんて面倒だったから、ほとんど参加しなかったけれど、 君と同じクラスの文化祭は、何日も前から楽しみだった! 君のメイド姿、本当に可愛かった! そして、卒業式の後、僕は君を、学校近くの公園に呼び出して告白をし、僕たちは付き合うことになった! 君は、「東京の大学に行くから、ごめんね」と、遠距離恋愛になることを謝ったけれど、僕は君と付き合えるだけで、本当に嬉しかったから、そんなことは全く問題ないと思った! それに、週に1度、必ず電話しているからね!大好きな君の声が聴けると、僕は本当に嬉しい。 でも、君は、本当に魅力的だから、君が気づかないうちに、勘違いした男たちが寄ってくるかもしれない。 最近、そんな男たちのことを想像すると、頭がおかしくなりそうだ。 君に変な虫が寄り付かないように、僕が絶対に守るから、安心してほしい。 ところで、「(きみ)」なんて、ずっと書いているけれど、そんな呼び方したことないのに、変だよね。でも、君のことを何と呼んだらいいか、わからないんだ。まだ一度も君の名前を呼んだことがないから。 この手紙が、君の元に無事届いた暁には、君に会いに行こうと思う! 楽しみに待っていてくれると嬉しいな! 戸川 英雄
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