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放課後の生徒会室。
入り口の扉が軽快な音を立てて開き、副生徒会長の清川瑞穂先輩――通称『みずほ先輩』が姿を見せた。
彼女のデスクは俺の隣。腰をおろし、頬杖をついてうっとりとした目を俺に向ける。
「かつき君、昨日の『エターナルメッセージ』、見たよね?」
「見ました、ついに最終回でしたね」
「もう……涙が止まらなかったわよね?」
「ははっ、そうっすね。最後に時を越えた恋人のふたりが再会できて、ほんとよかったっす」
みずほ先輩はドラマの感動が冷めやらないようだ。
高校入学早々、俺――黒澤克樹はみずほ先輩に目をつけられ、強引に生徒会に誘い込まれた。
みずほ先輩は生徒会の広報誌を執筆しているので、ネタ集めとして部活や地域の取材をしている。その取材に一度お供したら、「付き合って付き合って」としつこく言い寄られた。
断る理由がなかったので、「俺、フリー(ひまの意)っすから大丈夫っす」と言ったが最後、毎日引っ張り回されることとなり、ずるずると今日に至る。
そう、俺はみずほ先輩の忠実な下僕となり果てたのだ。
「ところでさ」
「ひゃいっ?」
みずほ先輩は薄桃色に染まる健康的な頬を俺の方に寄せる。つややかな長い髪がはらりと肩からこぼれ落ちた。奥ぶたえの向こうにある黒真珠の瞳が俺の顔を映し出す。
「もしも昔好きだったひとが目の前に現れたら、君ならどうする?」
「あー、俺、恋愛経験ゼロでここまできましたから、なんとも……」
色恋沙汰とは無縁だったので曖昧に返すと、みずほ先輩は顔を赤らめてでれっとした。
「っていうことは、高校生で初恋なのかぁ」
は? それ、在学中に俺に初恋が訪れるって意味っすか? ぜひそうであってほしいっす!
でも、もしかしてこのひと、予知能力があるのか!? 才色兼備のみずほ先輩なら、そんな神スキルがあってもおかしくない!
と思ったけど、そういわれたら気になるのが――。
「ところでみずほ先輩の初恋っていつっすか?」
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