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 大学の食堂で就活セミナーの案内を読み流していると、小中時代の同級生、タカミネ君からグループトークにメッセージが届いた。それは、前に電話で話していた件だった。 『約束の件、僕も調整できたから8月10日の土曜日で』  約束とは、小さな同窓会のようなもの。小学生のころ散々遊んだメンツで、集まることになったのだ。  ちなみにタカミネ君は当時、私達の中でリーダーみたいな人で、よくみんなをまとめていた。何をするにも先に動いて、みんながわらわらとついていく、みたいな。私は自覚あるくらいには鈍臭くて、それを少し後から追っかけてくようなタイプだった。  タカミネ君の他には、しょっちゅう悪戯してやんちゃだったキムラ君、勉強がめっちゃできた蔵元(くらもと)の長女のカナメ、元気が服を着て歩いてるようなマイコが参加する予定。  この中で、マイコは今もわりと連絡を取ってるけど、他の子とは疎遠になってしまってる。なにしろ高校を卒業すれば地元を出る人もいるし、もう働いてる人だっているのだ。例に漏れず、私も今は地元の岐阜を離れてて、埼玉から都内の大学へ通ってる。みんな今は、別々の道を歩んでいるのだ。  次々に了解のスタンプが付けられていき、私も最後に続いた。でも、参加に対する気持ちは、笑顔のスタンプとは裏腹にとても複雑なものでもあった――  8月10日。  電車を乗り継いで、二年ぶりの各務原(かかみがはら)へと帰郷した。  約束の時間は13時だけど、腕時計は三十分前を指している。ちょうど良いダイヤが無かったのだ。でも集合場所はイオン(界隈で唯一の大型商業施設)だし、早く着いたとて暇を持て余す事は無い。  小型のスーツケースを引っ張る私は、吹き抜けエリアへ。するとスマホが数回震えた。マイコからだ。どうやら寝坊で遅れるらしい。変わらないマイペース具合に表情を柔くさせつつ、近くのベンチに腰掛けた。  そういえば、このあたりも人が増えた気がする。ベッドタウンにもなっているから、昔から人は多い方だったけど。こう感じるのは果たして、昔はあまり周りが見えてなかったからなのか、それとも本当に流入があったからなのか。 「おいす、ヤマちゃん! 相変わらず集合に早いのな」 「あ。キムラ君……て、どしたのそれ」  馬鹿でかいリュック。バックパックって言うんだっけ。
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