14. 新たな日々と招かれざる客

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「―横浜の大島財閥と神戸の梅澤家の結婚となれば、関西の製薬会社の重役たちも一同に介するだろうな。化粧品業界もしかり、だ」 鶴原のお義父様はそう言って、羽織の前を正した。 「なんにせよ、めでたい事だ」 「―お二方、新婚旅行はどちらになさるのかしら。奈良?京都?はたまた、箱根へ?」 「…気が早いよ、はるさん。まだ式まで半年以上もあるっていうのに」 廉二さんが笑いながらはるさんをいさめていた。それを見ながら、目の前の光景を見つめる。千代子の結婚式の会場が東京に決まり、鶴原さんが進めていた香水が完成して、それが評判になった。いま、すごく幸せだ。 毎日が愛おしく、こんな日々がずっと続けばいいと思った。 ふと、鶴原のお義父様が立ち上がると廉二さんを奥の座敷に手招きした。 「ー廉二。すまんがちょっといいか」
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