5日前

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5日前

僕が夢を見たのは5日前だった。 自分が死ぬという夢。駅のホームに立っていた僕が、線路に落ち、電車に引かれるという気分の悪い夢。 僕は小さな頃から夢を見ていた。いわゆる予知夢というやつ。リアルな映像が見えるときもあるし、ぼんやりと言葉だけが頭の中に入ってくるときもある。 予知夢と言っても、すべてがわかるわけではない。自分にとって嬉しかったり大変だったりする出来事だけわかる。 わかるのはだいたい3ヶ月以内の未来。衝撃的なものほど予知するのは早い。ということは、死ぬということは自分にとってそれほどに衝撃的ではないのだろうか。それとも、そんなこと起こらないのだろうか。 今日の天気予報は晴れ模様だった。だが、3日ほど前、傘を持って行かず、ずぶ濡れになって登校し、嫌な気分で授業を受けるという夢を見た。 予知した嫌なことは大体は防ぐことができる。じゃあ、夢での僕はなぜ防ぐことができていないのだろうか。あの自分は未来を予知できない自分なのだろうか。あれが、本当の僕なのだろうか。 僕以外の人で僕のように未来を予知できる人はいるのだろうか。もし、いるとしたらマジシャンになっていたり、予言者としてメディアに取り上げられているだろう。僕はこの力を誰にも話したことはない。 もし、この力が僕は一人のものだとしたらどうだろう。そんな都合いいわけない。きっとそれはバグに近しいものだ。僕がこの世界のバグだとしたら、いつか修正されるのだろうか。修正されてしまうのだろうか。 それが5日後の死なのだろうか。誰かに殺されるのだろうか。 僕はいつも通り学校に行った。薄曇の下、傘を差して。
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