☆08. 松岡彰一朗に恋する小南紫奈子の事情。☆

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 かっ、と頬が熱くなった。そしてその変化を、岩村は、見逃さない。「まじかよおまえ……入社して早々課長と出来るったぁおまえ……」 「いいじゃないの。松岡課長は、わたしを認めてくれたんだから。大切なひとなの」  むきになる紫奈子を見て、切なそうに岩村は微笑んだ。「ふぅん。そうなんだ。……気づいてんのおれだけだから、あんま、ばれないように動けよ。話はそんだけだ。じゃあな」  なんだったんだろうあいつは。――マスクをする紫奈子をやたらと気にかけ、声をかけてきた同期。  先に紫奈子がセキュリティカードをかざして室内に戻ろうとすると、小さな、岩村がぼやいた声が、聞こえた。 「おれ。おまえのこと、結構好きだったんだぜ」  * * *  マスクをつけ続けるひと。  外すひと。選択肢は――様々だ。  でも。  人々の判断を尊重出来る自分になりたい。もっと――自分を好きになりたい。  だって。  こんなわたしを支えてくれた彼がいるのだから。
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